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奈良地方裁判所 昭和48年(わ)180号 判決

本籍

奈良市二名町三、四九〇番地

住居

同 市三碓町六二九番地

会社役員

松中安雄

昭和八年四月一二日生

右の者に対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は検察官加藤保夫出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役六月および罰金九〇〇万円に処する。

右罰金を完納できないときは、金二万円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は昭和四二年九月頃から奈良市三碓町所在の大富土地開発株式会社に歩合給の会社員として勤務するかたわら、同四四年から同町六二九番地所在の自宅で、自己の個人的業務として不動産の売買および仲介業を営んでいた者であるが、右事業から生ずる所得に関し、作為を加えて所得税を免れようと企て、

第一  昭和四五年一月一日から同年一二月三一日までの間における被告人の実際所得金額が三四、七〇六、五四八円、これに対する所得税額が一七、一七三、七〇〇円であるのにかかわらず、不動産の売買に際して他人の名義を用い、自己の取引でないように装って売上げを除外し、その分の利益で架空人名義など預金を設定し、または不動産を購入するなどの不正の手段によって所得を秘匿したうえ、同四六年三月一日、所轄奈良税務署長に対し右四五年分の所得金額が一三、六五七、九九九円、これに対する所得税額が四、八三五、六〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、よって右正当税額との差額一二、三三八、一〇〇円をほ脱し、

第二  同四六年一月一日から同年一二月三一日までの間における被告人の実際所得金額が一二五、五六七、九八四円、これに対する所得税額が八〇、九二一、七〇〇円であるのにかかわらず、前同様の不正の手段によって所得を秘匿したうえ、同四七年二月二九日、所轄奈良税務署長に対し右四六年分の所得金額が七四、四六〇、四五六円、これに対する所得税額が四二、八九五、〇〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、よって右正当税額との差額三八、〇二六、七〇〇円をほ脱したものである。(なお、貸借対照表は別紙第一表ないし第四表のとおりである。)

(証拠の標目)

被告人の当公判廷における供述のほかは、第一回公判調書中の検察官請求証拠目録記載の請求番号欄の番号、甲1ないし29、甲33ないし46、甲48ないし80、甲83の1ないし8、乙1ないし30(昭和四九年押第三号の一ないし三〇)、および同公判調書中の証拠関係カード記載の請求の順序欄の番号、85ないし87と同一であるからこれを引用する。

(法令の適用)

所得税法二三八条一項(懲役刑と罰金刑を併科する)、二項、刑法四五条前段、同法四七条前段(懲役刑につき)、一〇条(第二の罪の刑に加重する)、同法四八条一項(罰金刑につき)、二項、同法一八条(労役場留置につき)、同法二五条一項(執行猶予につき)。

(裁判官 高木寛)

第一表 貸借対照表 S45年12月31日 (総所得金額)

〈省略〉

第二表 貸借対照表 S45年12月31日 (事業所得)

〈省略〉

第三表 対借対照表 S46年12月31日 (総所得金額)

〈省略〉

貸借対照表 S46年12月31日 (事業所得)

〈省略〉

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